IWAKUMA RIKIYA
岩熊力也 / 画家
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Sand Island
Gallery KOBAYASHI
2011




砂の島


日比谷はかつて海岸であり、その沖合に墨田川が運んだ砂の堆積によってつくられた江戸前島と呼ばれる砂州があった。その突端が現在の銀座である。埋め立てられ、度重なる大火、震災、空襲、占領軍による接収をへて現在に至る。その砂の上でいま中国人観光客が大人買いに奔走している。

この一年私は新橋界隈にて埋蔵文化財発掘作業員として働いているが、その大地を掘り進めてゆくと砂の層に行き当たる。仄かに潮の香りの漂う穴の底でその仄暗い緑灰色に囲まれていた時、私は浮遊感を味わった。月面を漂う自分がみえた。

日本は6852の島々からなる。それぞれの島の浜辺は波に洗われ、境界線は常に揺れ動いている。地図を眺めれば、爆破され大陸から引き離された欠片が海洋を漂っているようにも見える。頼りなげな国土。思えばこの国はイザナギとイザナミが海をかき回して引き上げた矛から滴る一しずくの塩から始まったのだ。それから積りに積もって今や6852ではある。しかし気まぐれな神々は人間存在になどお構いなしである。彼らが欲しているのは変化と混沌だけだ。

「かちかち山」のお人好し(のんき?) なタヌキはウサギに騙されつづけたあげく泥の舟に乗りこみ沈められた。敗戦後、平和を謳歌しつづけた私たちもまた砂の島の上で何も気づかずあぐらをかいているのかもしれない。

「砂の島」と題された絵画群は国土流出の危機を憂う悲壮感からスタートしたが、同時に制作の現場では始源の世界への憧憬もほとばしりでた。描きながらそのことに気づいた。絵画もまた人間存在になど興味ないのだ。