IWAKUMA RIKIYA
岩熊力也 / 画家
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Rainstorm, Floods, and Silent tree
youkobo ART SPACE

2009.4.16 - 5.3





私の絵画は、描くという行為と共に、削る、剥がす、洗い流す、といった否定的な身振りの積み重ねによって、変容しつつ、生起する。

この「負」「無」へと向かう意志は、日本人が、大自然に対して、慎まやかに近づくために編み出した、最良の方法であり、大国から雪崩れ込んでくる「大きな美術」を、私たち自身の「小さな美術」へと作り直す為の、一つの方法である。「小ささ」「負」「無」は私たちに与えられた力である。

今回の展示作品は、これまでと違い、「負」の要素は少ないかもしれない。むしろ、これまでの作品で葬りさられ、秘匿されていたものを抽出し、提示したものとなっているかもしれない。

その代わり 、色彩は極力抑えられた。

今回、素材には「桃の木炭」が選ばれた。

山梨にあるアトリエの周囲一帯には、広大な桃畑が広がっていて、その枝を拝借し、自ら木炭を焼成した。

古来我国で、桃の木は、魔除けや、神秘的な呪力を持つと考えられてきた。日本神話の発端で、イザナギは黄泉の国から逃げ帰る途中、追いすがる追っ手に桃の実を3つ投げつける。それにより、彼は空蝉の世へと戻る事ができた。

また、桃から生まれた桃太郎が、鬼を退治するという昔話が伝わっている。

この桃の枝から作った木炭で、私は夢を綴った。

夢はいわば黄泉に属している。

しかし今日も私は空蝉の世へと戻ってくる。

何度でも黄泉帰る。

空蝉の世で夢を見せ続けること、それが、我々画家に課せられた仕事であろう。


岩熊力也

200942