IWAKUMA RIKIYA
岩熊力也 / 画家
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Palimpsest
パランプセスト
重ね書きされた記憶
企画:北澤憲昭


gallery αM




αMの展示にむけて

現れては消え、また現れては消える、そんな生成と消滅を繰り返しながら朧にたち現れてくる風景が私にとっての絵画であった。だからその絵画にはあらかじめ見透せるイメージなどなく、常に不意に現れる世界といかに向き合えるかが試されていたように思う。生成と消滅を媒介していたのはいつも「水」であった。
「水に流す」「水をさす」「冷や水を浴びせる」それらの言葉に導かれるように私は自らの絵筆で描いたイメージを水で洗い流し、また描いては水に流しを繰り返していたが、数年前の父の死を契機としていつしかその行為は死者を記憶するとはいかなることか、という問題に結びついていった。死者の肖像を洗い流していく「LAUNDRY」のシリーズはこうして生まれ、日本のお盆に似た風習をもつメキシコの死者の日にメキシコのパツクアロで発表された。
今回展示するαMは馬喰町のビルの地下である。隅田川の両岸は土を掘ればまだ空襲による大殺戮の痕跡が生々しく出現するであろう。だが私たちは蓋をしてしまった。おかげでいまだに私たちの戦後は終わらない。藤田嗣治一人の背中に重荷を負わせ延命した日本美術もまた終わりのない日々を送っている。
今回の展示全体のタイトルは「guilt」とする。そこに「LAUNDRY」のシリーズと、洋服に仕立てた作品群「osean」を並べる。
会期は梅雨の真っ只中だ。また色々なものが水に流されるだろう。だが、流れずに残像となってつもり積もったものたちが織り成すまだ見ぬ風景、その現れを期待したい。

岩熊力也