IWAKUMA RIKIYA
岩熊力也 / 画家
news biography contact


Melting Mountain
溶山
Gallery KOBAYASHI
2009



溶山(真紅の国に姿を消した人)F130 2008



溶山(神殿の上に神殿、豪雨の日々)F120 2008



溶山(女たちの島、神々の帰還、鐘の音)F130 2008



洪水


「この地の古老らが言うには、すべての河は、トラロカンと呼ばれるこの世の楽園みたいな所で、チャルチウトリクエという名の女神が支配している場所から流れ出している。またその上にそびえる山々には水がいっぱい満たされ、外側は、まるで大きな水甕か、水を満たされた家のように土で蔽われており、時が至ると、山々は壊れ、中に溜っていた水が流れ出て、大地を水没させてしまうだろう」
  〜アステカ族のトラロカン神話
ル・クレジオ「メキシコの夢」より



近年、私の絵画制作には水やりが不可欠である。私の右手は絵筆と霧吹きを交互に握る。水をやったからといって絵画が育つわけではない。むしろ減っていく。画像は崩れていく。崩落の音に聴き入る日々。
しかし、それではあまりにバランスが悪い。私は盆栽を育てることにした。霧吹きを手に画房の外に出ると、黒松、赤松、真柏に水をやる。彼らは水を与えなければ枯死するだろう。
しかし、ここには悲しい矛盾があった。盆栽であるためには、生かしながらも、成長をコントロールしなければならない。しかも針金などで姿勢までも矯正される。私はこれまで自然を愛してきたが、ペットにするのは初めてである。
この悲しみになぜか私の心は惹きつけられた。山中の画房に孤独な男と孤独な樹木が残された。
広大な氷河を抱えるカナディアンロッキーもかつては海の底にあったという。そして今、氷河は溶けだしている。ハリケーンは合衆国を襲い、サイクロンは東南アジアを吹き飛ばし、ゲリラ豪雨が日本の家屋を飲み込む。
世界は水であふれはじめている。

岩熊力也