IWAKUMA RIKIYA
岩熊力也 / 画家
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Gas station Hamburger Queen
Dai-ichi Life South Gallery
2011



海と山の狭間にその村はあった。貧しくはあったが、皆なんとか生きていた。或る日のこと、少年たちが浜辺で寄せてはかえす波を眺めていると、水平線の向こうから一艘の舟がやってくるのが目に入る。白浜に降り立ったのは黄金の髪をもつ女だった。その夜一人の老女が殺害され、以来海から太陽が昇ることはなく、村は闇に閉ざされた。

村に再び光をもたらしたのは女だった。広場に面した場所に建てられた女の店には四六時中煌々と明かりが灯され、ガソリンから日用品、食料に至るまで手に入らないものはなかった。少年たちは女にチョコレートをねだり、女たちはきらきらしたドレスに目を輝かせ、男たちは女の作るふわふわしたものにはさまれた牛肉を夢中で頬張った。

人々が夢見るように過ごしていた或る日、森に火の手があがり、かちかち山を真っ赤に染めた。業火は瞬く間に村をも包み込み、村人たちは家を失った。女が火をつけるのを見たと主張する者もいたが、人々は老女の祟りと畏れ、自らの不信心を戒めた。

女は言った、海の向こうには太陽の沈まない国があると、欲しいものは何でも手に入り、老いを知ることもないと。全てを失った村人たちに旅立ちをためらう理由は何もなかった。女に言われるまま泥で舟を造ると一斉に乗りこんだ。そして、かつて太陽の昇ったあの海の向こうへと舵をきった。